右脳開発でお子様の才能を開花
第196回 不寛容社会=日本はどこへ向かうのか?
若い世代を中心に、
幅広い音域と豊かな歌唱力をもつ歌姫として
世界中で人気を集めるアメリカ人歌手
アリアナ・グランデさん(25)を
ご存知でしょうか。
アリアナさんは、2017年、
日本ゴールドディスク大賞
「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」を
洋楽部門で受賞しました。
ネットでの影響力も大きく、
インスタグラムのフォロワー数は
1億4千万人で世界4位、
ツイッターのフォロワー数も6千万人を
数えます。
そんなアリアナさんは
大の日本好きとしても知られ、
2015年2月には
「わたしはべんきょします!」
という言葉とともに、
日本語を練習する直筆のノートを
ツイッターに公開しました。
16年4月には熊本地震を受けて
「きょうの じしんで
ひがいを うけた かたがたへ、
わたしの あいと いのりが
とどきますように。」
と投稿しています。
彼女は、大の親日家で、
熱心に日本語を学んでいました。
しかし、2月上旬、
アリアナさんは自身のツイッターに突然、
こう投稿したのです。
「(日本語の)レッスンを受けるのは
やめます。
情熱があって、楽しんで習っていたのに。
日本に住んでみたいとも本気で思っていた。
でも、もういい。」
アリアナさんに何が起こったのでしょうか。
そのきっかけは、
1月に発売した新曲“7rings”です。
アリアナさんは1月下旬、
自身のインスタグラムに1枚の写真を
掲載しました。
手のひらに大きく
「七輪」と書かれたタトゥーで、
「7rings」発売を記念して
入れたものでした。
和訳すると「七つの指輪」、
短縮して「七輪」と彫ったのです。
ですが、「七輪」といえば
日本では肉や魚などを焼くコンロを
指す言葉です。
そのためアリアナさんに対しては
「日本のバーベキューグリルだ」、
「『七環』じゃダメだったのか」
などという声が寄せられました。
間違いを認めたアリアナさんはその後、
「七輪」の下に「指♡」とタトゥーを
彫りました。
すると、今度は
「七輪指みたいで変だ」などの投稿が相次ぎ、
アリアナさんが日本語を使うことへの
揶揄(やゆ)にまで発展しました。
「浅はかで、文化の盗用だ」
「私は日本人だけど、
日本のことをよく知らない人に
使ってほしくない」
といった投稿が相次ぎました。
それを受けて、アリアナさんは
以下のような一連の投稿を掲載しました。
「私が漢字を使うことができないのは
明らかでしょ。
私にどうしろって言うの。
(日本語への)愛と感謝があって
やったことなのに。
私に何を言ってほしいの?」
「このようなミスをしても、
気にしない人がいるのは分かる。
でも、私はとても気にしてしまう。
私に何をしてほしいの?
何て言ってほしいの? マジで」
「すごく心配になっちゃった(笑)
私は人を傷つけることが嫌い。
このアプリ(ツイッター)にいる人は、
純粋なミスをした人に対して
許すことはできないみたい。
自分のことしか考えないのね」
「私の日本のファンは、
私が日本語を使ったり
衣装に日本語を入れたりしていると、
とても喜んでくれた。
でも、日本語が使われたグッズは
私のサイトからは全て削除した」
大の親日家である大物歌手が
日本に背を向けてしまった瞬間です。
ここにある問題は2つあると思います。
先日もNHKが取り上げていた
「不寛容社会となっている日本」
という問題です。
文脈全体を考えず、
一言の失言だけを取り上げて
大騒ぎすることは、
今の日本では日常茶飯事です。
また、日本語教師の中で言われている
「日本語の上級への壁」がある
ということも覚えておく必要があります。
日本語を話す外国人の発音が
ある程度正確になり、
敬語の運用もかなり使えるような
レベルになると、突然、
日本語話者の姿勢は厳しくなる
というものです。
特に敬語のエラーや、
細かいニュアンスの受け取り間違いなどを
起こすたびに、
「失礼だ」とか「そんな日本語では通用しない」
などという非難が始まります。
今回の事件もこのようなことが
関係しています。
これからの時代は、
世界各国に人々と共に生きていくことが
さらに必要となります。
ですから、
今の社会が不寛容な社会となっていることを
自覚することと、
日本語の特異な性質や文化を
もう少し深く理解しておくことが、
このような悲劇を生む土壌を作らないことに
つながると思います。