右脳開発でお子様の才能を開花
第250回 子どもの「ハマリ体験」が未来をつくる
心理学者ユングが、
共時性という現象を発見した背景には、
主に三つの体験があったといわれています。
一つには、患者の夢分析で、
過去に見た夢のことを語っていると、
その内容と奇妙に符合した現象が
実際に起きるということが、
しばしば観察されたことです。
さらに、
ユング自身が頻繁に「予知夢」を見て、
第一次世界大戦の勃発などを
事前に予知していたことです。
その上、『易経』のドイツ語訳をした
ヴィルムヘルムと一緒に
毎日「易」の実験をし、
基本的に「卦」が良く当たる、
との結論を得たことなどです。
これらの体験から、ユングは
宇宙は物質的な「目に見える秩序」の背後に
さらに奥深い「目に見えない秩序」が
存在する、という結論に達しました。
その「目に見えない秩序」が、
夢や卦と現実世界の双方に同時に現れるのが
「共時性」として観測されるという
考え方です。
そして、
物質世界だけに限定して論じている科学は、
根本から塗り替えなければならないと
考えました。
さらに、それまでの科学の根本原理である
「因果律」に代わって
「共時律」を基本とする新しい科学の樹立を
提案しました。
これをのちにノーベル賞を受賞した
物理学者バウリがそれを後押ししました。
当時は、ワトソンやスキナーなど
行動主義心理学が勢力を伸ばしていました。
フロイトやユングから始まった深層心理学が、
主として内観的手法を用いることに対して、
行動主義心理学の学者たちは非科学的だと
切り捨てました。
人間の行動に対する動機付けの理論も、
外部から理論的に観察できるものに
限定しました。
つまり、
人間は金銭、地位、名誉などに対する期待や、
処罰や不名誉に対する恐れなどによって
動機づけられる、ということになります。
シカゴ大学心理学科の教授だった
チクセントミハイは、
それらを「外発的報酬」「外発的処罰」と
呼びました。
人間の行動は金銭、地位、名誉などに対する
期待(=「外発的報酬」)や、
処罰や不名誉に対する恐れ(=「外発的処罰」)
などによって動機付けられると定義しました。
今日でもこの考えは、
広く一般的な社会常識として受け入れられ、
ほとんどの人は成人に達するまでに、
「外発的報酬(処罰)」に反応して
行動するように条件付けられています。
したがって、私たちにとって
「仕事」や「勉強」というのは、
自分自身の心からの願望に逆らって、
したくなくても多くの時間を
費やすべきものであり、
「遊び」というのは、
たとえ無益なことであっても
好きなことをすることだ、
と二分して考えています。
だから仕事や勉強には退屈と欲求不満を感じ、
遊びには罪の意識を感じることが多いのです。
ところが、いかなる報酬も生まない
数多くの活動に没頭する人々を調べた結果、
人が喜びを感じるということは、
仕事や勉強、遊びにかかわらず、
何かに没頭している状態であることを、
チクセントミハイは見い出しました。
そして、彼はその状態を「フロー」と名付け、
「フロー理論」として提唱しました。
フロー状態の特徴としては、
以下のようなものがあります。
① 行為に集中、没頭している
② 浮き浮きした高揚感
③ 雑念がほとんどわかない
④ 時間感覚の喪失
⑤ 自分自身の感覚を喪失している
⑥ その場を支配している感覚
自分が有能である感覚
⑦ 周囲の環境との調和感、一体感
フローの研究はさらに進み、
フロー状態にある人は「共時性」を頻繁に経験し、
幸運を呼び込んでいくと説く人もいます。
「フローに満たされると、次々と偶然が起こり、
出来事が収まるべきところに収まり、
障害も消える。
人生は無意味な戦いではなくなり、
納得のいく目的と秩序の感覚に満たされる。
フローは人生を変える莫大な力を秘めている。
なぜなら、
フロー自体が躍動的なエネルギーに満ち、
人生に間違いなく喜びと活気を
もたらしてくれるから」と。
つまり、
きわめて多くの人がフローに入ることにより、
共時性が起きやすくなり、
運がついてきたと感じるのです。
~志のある人間に
第215回『運命の法則1』を参照~